実家のお盆の手伝いのため、帰省することとなったかおちゃん。夫のヒロは仕事のため留守番だ。
実家には父母、それから私の妹、妹の旦那、妹と旦那の子(男の子)、猫2匹のいるにぎやかな家庭だ。帰るにあたって、お土産をと思ったのだが、暑いからいらない、太るからいらないと母妹に言われてしまい困ってしまった。なのでいつものようにふて寝をキメていると、なぜか、ばあちゃん家の庭が思い浮かんだ。
早くにじいちゃんに先立たれたばあちゃんが、独りで住む家は車で10分ほどの所にあり、子供のころ妹とよく預けられていた。庭には季節によってさまざまな花が咲いていて、とてもとても美しかった。
夏になると、ばあちゃんは庭のほおずきを取って見せてくれた。まわりのカサカサしたオレンジ色の皮と、中のテカテカしたまあるい実を見て、子供心に美味しくないけどきれいだなと思った。
そんなノスタルジーに浸っていると、なんだかやる気が出てきた。今回の帰省は、ばあちゃんの新盆の手伝いだ、よし、ほおずきを作ろう!!
1時間ほど和紙で作成を試みたが失敗した。私と和紙は相性が悪かったのかもしれない。やる気をなくした。昔あった嫌なこととか思い出してへこんだ。ふて寝。起きる。そうだ、フェルトで作ろう!!
完成!!
花束っぽくしてみた。
ほおずき特有のカサカサした質感やレースのような繊維がまるで再現できていない。どちらかというとパプリカに近い。ごめんよ、ばあちゃん、今の私にはこれが精一杯。ばあちゃんが育てていたほおずきには到底及ばないよ。でも作っている間、ばあちゃんのことたくさん思い出したよ。妹のことが大好きで「私の一番かわいい子」ってよく言ってたね。認知症になってもそれは変わらなかった。でもそんな中で一度だけ私のことを「この子は一番優しい子」って言ってくれた。うれしかった。言葉とか行動とかそういうものが優しさとして、ちゃんとばあちゃんに届いていたことが、本当に本当にうれしかった。
このへったっぴなほおずきを持って帰ります。裁縫がうまかったばあちゃんはため息をつくかもしれない。私は、ばあちゃんに裁縫、料理、花の名前、ほかにもいろいろなことを教えてもらった、今でもちゃんと私の中で生きている。それに今私が使っているお気に入りの裁縫箱は、ばあちゃんの小物入れだ。
おしまい